「毒母」の過干渉で何もできない人間に 歪められた人生への怒りで自分の腕を噛む30代男性 (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「毒母」の過干渉で何もできない人間に 歪められた人生への怒りで自分の腕を噛む30代男性

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黒川祥子AERA
毒親問題の根底には、昭和、平成、令和と時代が変わるなかで、価値観や経済状況が激変していることがある(撮影/写真部・松永卓也)

毒親問題の根底には、昭和、平成、令和と時代が変わるなかで、価値観や経済状況が激変していることがある(撮影/写真部・松永卓也)

 男性は22歳の時、ひきこもりの支援施設へ入所した。

「生きる知恵がない。コミュニケーション能力もない。こんな人間がどう社会で生きていけるかと、自分で入所しました」

 面会のたびに母親は手作り弁当を持参し、洋服を買ってきた。拒否すれば、激昂した。

「おまえは、親の心がわからないダメ人間だ! 親の言うことを聞け! 黙って、言われた通りにすればいいんだ!」

 敷かれたレールが何かもわからぬまま、「親の言うことを聞かないから」と35歳で突然、実家への立ち入りを禁止された。

 以降、男性は運送業や警備員など「人と関わらずに済む」仕事をして一人で生きている。今、はっきりと思うことがある。

「ああ、オレは、親に潰(つぶ)されてきたんだ。すべてを否定されて」

 不意にフラッシュバックが起こり、怒りがこみ上げる。

「オレをバカにすんじゃねえ!」

 度し難い感情を抑えるため、腕を噛む。袖をまくり見せてくれた両腕には、5センチ四方ほどの真っ黒な傷痕。これこそ、母親に全否定され、歪められた人生への怒りそのものだった。

 この国の水面下に、「毒母」に苦しむ男性が相当いることは間違いない。(ノンフィクション作家・黒川祥子)

AERA 2020年10月19日号より抜粋


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