「対面は『その場限り』も多いけど、オンラインなら簡単に連絡を取り合える。関係をゆるく続けるには、オンラインがおすすめです」

 ひきプラの田島さんは活動の中で、当事者と家族などの支援者がお互いの思いを知れる「場」を強く求めていることを、あらためて痛感しているという。

「当事者も家族も、相手が『何を考えているのだろう』と悩んでいることがすごく多い。家族会と当事者会だけではなく、今後はその間をつなぐ役割をするイベントをやりたい。そこの悩みを解決することが、8050問題にとっても大きなポイントになるのでは」

■人材育成が大きな課題

 コロナ禍では、民間の支援団体の活動だけでなく、行政による支援もほぼストップした。一方で、ひきこもり支援の窓口である社会福祉協議会への相談件数は、生活困窮などにより40倍にもなったという。

「ひきこもりに関する業務が回らない状態が続いています。加えて、支援者は感染対策でアウトリーチ(訪問)もできない」(前出の大橋さん)

 前出の池上さんも、いまの行政には課題があるという。

「圧倒的に人材の育成が課題です。現場の相談員の多くが、ひきこもる人の心情や特性、家族の苦しみなどを想像できてない。そこをきちんと勉強して理解する。その上で当事者や家族にとって有益な情報収集をする。でないと相談する側が傷つき、支援の拒絶につながります」

 来年4月には、8050問題を見据え「ひきこもり」「介護」「貧困」の分野ごとのタテ割りをなくし、一括して相談に応じる自治体を国が支援する「改正社会福祉法」が施行される。

 前出のマイメロさんは、ワンストップでの対応は利用者のプラスになるとしつつ、自治体の対応についてこう提案する。

「ひきこもりの家族は近所の人に知られたくない思いが強く、遠い自治体を利用することはよくある。そんなとき、『あなたは対象外の地域です』と断り、何も代替案を示さないのは行政の怠慢です。支援者は自分たちのテリトリーだけでなく、幅広く他の支援者や相談先を把握し、提案することが求められます」

(編集部・小長光哲郎、高橋有紀)

AERA 2020年10月19日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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