John Bolton/1948年生まれ。エール大法科大学院で法学博士号を取得し、弁護士に。国務次官、国連大使など歴任 (c)朝日新聞社
John Bolton/1948年生まれ。エール大法科大学院で法学博士号を取得し、弁護士に。国務次官、国連大使など歴任 (c)朝日新聞社

 米大統領選挙を前に回顧録を出版したジョン・ボルトン前国家安全保障担当大統領補佐官。AERA 2020年10月19日号で、菅首相や日米関係、共和党の今後などを語った。

【写真】トランプ氏の後ろに…

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──日本の菅義偉政権が発足したばかりだが、安倍晋三前首相はあなたの長年の知り合いであるとともに、トランプ氏ともユニークな友情関係を築いた。

 安倍氏は、彼が官房副長官だった約20年前に会った。彼は、トランプ氏と良好な関係を保つために相当の努力をしたと思う。簡単なことではなかっただろうが、彼は日本の国益を優先するべきだとよく理解していた。菅氏は官房長官として訪米もしたし、安倍氏がトランプ氏とどう接してきたかを目の当たりにしてきただろう。昨年、菅氏が訪米した際、河野太郎外務大臣(当時)の招待で夕食をとったが、非常に印象的な人物だった。彼は、強い日米同盟関係を約束し、努力するだろうと思う。

 11月にバイデン氏が大統領選で勝利すれば、2人の新しいリーダーが誕生して、互いに政権移行期間はあるだろう。しかし、根底にある日米関係は非常に強靱(きょうじん)で、それが最も重要な点だ。トランプ氏の困った点は、国家首脳との個人的な関係と、歴史的に根底にある2国間関係の違いを理解できなかったことだ。しかし、バイデン氏はその違いを問題なく理解できる。誰もが首脳とは個人的に良好な関係を持ちたいだろうが、北朝鮮や中国に対抗するという意味で、日本と米国の基本的な利益と価値は、これまでと変わらない。

■共和党の今後を考える

──英語版、日本語版ともに500ページ以上の回顧録ですが、これだけのファクト(事実)や材料を書く前に記憶にとどめるのにどんな工夫をしたのでしょうか。ホワイトハウスにいる間に出版を計画していましたか。

 米国の国連大使の任を終えた後、著書を書いて以来、本を書くことは常に頭の中でオプションとしてあった。私は親譲りで記憶力がとてもいいのと、メモはたくさんとるし、職場を去ったらなるべく早く原稿を書くようにしている。本著は回顧録であり、また歴史書だと思って書いた。ファクトが詰まっていれば、歴史書としても生きながらえると思う。

──選挙後の計画は。

 執筆と人びととの対話を続けていくつもりだし、これはとても重要なプロジェクトになる。すでに選挙シーズン前から、2016年にトランプ氏とともに犯した同じ間違いを共和党が繰り返さないために、投開票日後に何をしたらいいのか、多くの人と会話を交わしてきた。今後、私自身とともに多くの関係者がこのプロジェクトに加わっていくだろう。

(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2020年10月19日号より抜粋