「クラスターが出て世間のバッシングにさらされていたライブハウスを応援したいと思いました」(住田さん)

 構成を担当する音楽ライターの松永良平さん(51)も、

「ライブハウスが悩みながら頑張っている現状を伝えるというより、ぼくらが作っていたのはこうなる前の話。生きているライブハウスの素材を見せるのは逆に面白いと思った」

 と話す。磔磔だけを特別視するような作品にならないように注意していたが、コロナ禍で逆にすべてのライブハウスが同じ試練を経験する状況になった。

 磔磔初体験が「高1の年末の憂歌団」という監修担当のフジテレビゼネラルプロデューサー黒木彰一さん(51)はこう語る。

「コロナ禍で映像を見直して、ついこの前まであったのにもうなくなった近過去がこんなにみずみずしいのかと驚いた。これは磔磔だけの話ではなく、どこのライブハウスも同じ。いまの状況でこの映像を放送すれば、多くの視聴者と共有できるんじゃないか。それで地上波でやろうということになりました」

■人類にとってライブは

 コロナの影響を受けつつ音楽のこれからをどうしていくのかは「社会全体の問題でもある」と黒木さんは言い、こう続ける。

「人が集まって演奏を聴き、一緒に歌ったりするライブというものを、人類は忘れるのか、忘れないのかということだと思います」(黒木さん)

 番組は小泉今日子さんのこんなナレーションで終わる。

「いつかまたどこかのライブハウスで、忘れられない夜を過ごせますように」

(朝日新聞出版・小柳暁子)

AERA 2020年10月5日号