伊藤さんは肩こりが生じる最も重要な要因は、交感神経の緊張だと言う。具体的にはストレス、悪い姿勢のほかに寒冷、衣類、気圧、内臓疾患といった要素を挙げる。注意すべきは季節の変わり目だ。

「急激な気温の低下や大きな寒暖差は交感神経を緊張させ、筋肉などの血流を低下させます」(伊藤さん)

 最低気温が10度を下回ると着る衣類が増えて重くなり、肩はこりやすくなる。気圧の変化も要注意だ。

「気圧が高いと交感神経が緊張し、肩こりが生じやすくなります。一方、既にこりのある人は、気圧が下がると症状が悪化します。一年のうちで11月は一日の寒暖差が大きく、12月は高気圧の日が多くなるため身体的ストレスが増しやすい。晩秋から冬はこりの症状が出やすいので要注意です」(同)

 内臓疾患が原因で肩こりを起こすケースもある。例えば、胃の調子が悪い人は右肩、肝臓なら肩甲骨の下の方、膵臓なら左肩に症状が出やすいという。

 伊藤さんは「肩こりは生活習慣に由来する」と強調する。

「鍼灸や指圧による治療で症状は改善されますが、無理な姿勢でパソコンやスマホを長時間使い続けていると必ず再発します。人任せにせず、自分の体は自分で守る意識が必要です。過度な緊張を減らし、運動やストレッチを取り入れるなどして自己管理しないと、こりは一生ついてまわります」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年9月21日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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