「とにかく様々な抵抗があって前に進まず、一番必要な時期に接種ができなかったという反省があります。例えば、すでに購入契約を終えていた輸入ワクチンではなく、国産ワクチンの開発を求める声が自民党から強く出ました。ワクチンには普通に入っている成分ですら『不純物だ』と指摘されることもありました」

 足立氏が特に大きな課題として向き合ったものは、二つある。

 一つは接種の回数をめぐる問題。1人につき2回の接種が推奨されていたが、「専門家の方々が科学的な根拠を示さずに『1回で大丈夫』だと言い始めたのです」と足立氏。より多くの国民への接種が念頭にあった。これはその後、根拠が得られたため最終的に認めたが、土壇場で接種可能人数が混乱した。もう一つは、今回も一部で考え方が示された接種の優先順位の問題だ。

 こうした経験を踏まえて、足立氏は指摘する。

「例えば海外のワクチンを日本で承認して接種を始める際、たくさんの厳しい指摘が予想されます。副反応について十分に把握しきれているかどうか、あるいは被験者の数や効果持続期間はどうか。科学的に正しい臨床研究を筋を通して実施しない限り、うまくはいきません」

 ワクチンに詳しいナビタスクリニック(東京都)の久住英二医師も、今検討するべき課題について指摘する。

「予防接種法に基づく臨時接種にするのか任意の接種にするのかで、まったく話が違ってきます。当然、予防接種法による臨時接種にして100%国費で行うべきです」

 円滑な接種のための仕組みづくりも必要だ。こう続ける。

「接種場所の割り当てやタイミングの連絡をすべてウェブ経由でできるようにするべきです」

(編集部・小田健司)

AERA 2020年9月7日号より抜粋