4月にはツイッターでキーワードを募集し、それらをもとに上白石が作詞する企画「#もねうたうたね」を実施。約2千人から送られたすべての言葉に目を通し、「あくび」という曲の歌詞を書き上げた。土曜日の朝、マンションの角部屋で目覚めた“僕”は、隣でまどろむ“きみ”を見て、今日はどこへも行かず部屋でまったり過ごしたいと思う。そんな何げない日常を切り取った詞だ。

上白石:こういうのが私にとっての理想なんです。角部屋に住んでいること以外は全部想像ですけど(笑)。書いている途中で、一歩も外に出ないステイホームの歌詞にしようと思いついて、風景描写も窓から見えるものだけにして、家の中でゴロゴロしながら作りました。……いや、そんなふうに言うと余裕で書いたみたいですけど、実際は作詞する時は毎回もう、頭を抱えながら作っています。「明後日レコーディングだ、どうしよう!」って。

 そうして作り上げたアルバムが発売日を迎え、多くの人が聞くことになる。その心境は、映画や舞台の発表前とは違う?

上白石:映画とかもめちゃくちゃ緊張するんですけど、今はちょっとだけ楽しみが強いです。それはできたアルバムの一曲一曲が本当に大好きだし、良い曲だという確信があるから。

(編集部・藤井直樹)

AERA 2020年9月7日号より抜粋