新型コロナウイルスによる肺炎が流行した武漢で、作家の方方氏が発表し続けた日記が世界の注目を集めた。温和で、中国共産党の権威に挑むものではまったくなかったが、流行を食い止められなかったことについて責任を追及する考えを示しただけで、中国国内で2カ月にわたり数千万のネットユーザーの袋叩きに遭い、脅迫を受けた。この「私はウイルス――武漢ロックダウン日記」は、方方氏と同じく武漢で暮らす一般市民の男性「阿坡(APO)」が、中国共産党を批判する反省の書として記したものだ。「一人の健全な精神を持つ中国人」として、世界に向けてお詫びの気持ちを示したいという。このコロナ禍がもたらした思わぬ変化は、中国人の日本観の変化だという。
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■2020年3月9日 ウイルス禍で日本人に対するよい評判が沸いた(番外編)
1978年から80年代を通じて日本のテレビ・映画作品が中国を風靡したことを50歳以上の人なら誰でも知っている。「追捕(君よ憤怒の河を渡れ)」「望郷(サンダカン八番娼館 望郷)」「血疑(赤い疑惑)」「排球女将(燃えろ、アタック)」「阿信(おしん)」「姿三四郎(同)」「寅次郎的故事(男はつらいよ)」「幸福的黄手★(幸福の黄色いハンカチ/★ははばへんに白)」などなど枚挙にいとまがない。高倉健、山口百恵、三浦友和らはどこの家でも知っている日本人俳優で、その影響力と愛され方は現在人気絶頂の中国人スター、アイドルにひけを取らない。その年代の中国人が持っていた日本に対する好感度が非常に高かったことが想像できるだろう。
ところがこの10年、日本のテレビ・映画は中国の映画館チェーンのスクリーンからほとんど姿を消した。テレビには抗日ドラマが溢れかえり、80年代に若者だった、つまり日本作品に熱狂した人たちは毎晩飽きもせず抗日ドラマを見て憤慨し、残念がり、揚げ句には日本とは必ずもう一戦やらねば、と声を張り上げる。