また、感染者の致死率や重症化する患者の比率は、検査件数が増えてより軽症・無症状の感染者の数が増えれば下がるので、必ずしもそのままでは病原性を表す指標として使えない。

 新型コロナウイルスの変異は、これまでに世界で約5千種類見つかっている。その中には、ウイルスの性質をまったく変化させないものも少なくない。一方、ウイルスの感染力や、重症化する感染者の割合を左右する病原性に、どのような影響があるのか、現時点では不明の変異もたくさんある。

 ところで、初期に見つかったウイルスを基に開発されているワクチンの効果に、変異は影響しないのだろうか。

 水谷さんはこう説明する。

「ウイルスの一つのたんぱく質に対し、ヒトの体内では、たんぱく質の異なる部位を認識する複数の抗体ができる。同じように、1種類のワクチンにより、複数の種類の抗体ができると考えられるので、1カ所の変異によって効果がまったく無くなるわけではないだろう」

 より注目すべきことがある。

「ワクチンでは、ウイルスの変異よりも、どれぐらいの抗体が体内にできれば感染を防げるのかといった別の課題の方が大きな問題だ」

(ライター・大岩ゆり)

AERA 2020年8月31日号より抜粋