自主隔離のための宿泊施設を紹介するウェブサービス「自主隔離ドットコム」には、家庭内感染の増加が報じられるようになって以降、問い合わせが急増している。運営するマツリテクノロジーズの担当者は言う。

「感染拡大が始まった当初と比べると、3割ほど問い合わせが増えています。職場などで陽性者が出ていて、家族にうつすのが怖いので念のため自主隔離したいという人がほとんどです」

 家庭内にウイルスが持ち込まれると、家族間の感染を防ぐのは難しい。感染症に詳しい内科医で、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師はこう話す。

「若い人は感染しても発症しないことが多く、発症した人が最初の感染者とは限りません。例えばおばあちゃんが最初に発症しても、調べてみると無症状の子や孫が感染源だったという例は珍しくないんです。誰にも症状がないのに、家のなかで厳しい感染対策をするのは現実的ではありません。気が付いたら広がってしまっているんです」

 さらに、濃厚接触者や陽性とわかった人も、数日は家の中に留まることになる。検査結果の判明、入院先の確定までにタイムラグがあるからだ。

 神奈川県に住む20代の女性は7月中旬、夫の職場で陽性者が出て夫も濃厚接触者になったと知らされた。夫は翌日に発症。しかし、PCR検査を受けるまでに3日、陽性がわかって収容先へ移動するのにさらに2日かかり、濃厚接触者となってから5日間を自宅で共に過ごした。

「検査にも隔離にも時間がかかり、もどかしいと同時にすごく不安でした。9カ月の娘が感染してしまったらとか、夫が重症化したらとか……」

 夫が濃厚接触者となってから、対策を進めた。家の中を感染ゾーンと非感染ゾーンに分け、夫は極力感染ゾーンから出ずに過ごした。入浴などでゾーンを出る際は、歩いた場所を毎回消毒。食事は部屋の前に置き、ひとりで食べてもらう。食器はすべて使い捨てにした。入浴は夫が最後。夫が掃除したあと、女性が再度消毒する。洗濯ものは入浴の際に直接洗濯機へ入れてもらい、女性は触れないようにした。

次のページ