「在宅勤務なので、どこで働いていても変わらないと思って。地方に実家がある同僚も、半分ほどは既に帰省しています」

 インフルエンザが1月末にピークを迎えるのは、年末年始の帰省や旅行でウイルスが広まるからだとされる。7月の4連休とお盆休みで同じことが起こりかねない。久住医師は、「9月危機」についてこう懸念する。

「このまま高齢者も含めた広い世代に感染が広がれば、限りある医療資源を誰に振り向けるかというトリアージが必要になる可能性があります。要介護認定を受けているような高齢者はもともと肺炎の予後がよくない。トリアージでいう“黒タグ”をつけざるを得なくなります」

 トリアージとは、災害や大事故で多数の患者が出た際に、緊急度に従って付ける手当ての優先順位のことだ。黒タグが意味するのは「救命不能」。つまり、医療提供されないということだ。

 医療を受けられる人を、社会的に選抜しなければいけなくなる未来を見ないためにも、直ちに明確な方策を示すことが必要だ。(編集部・川口穣)

AERA 2020年8月24日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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