2021年度の大学入試の大筋がようやく決まった。二転三転する入試施策に振り回されてきた教育現場。再び感染が拡大するいま、不透明な先行きに徒労感が漂う。AERA 2020年8月3日号で掲載された記事から。
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高校でも対策を進めている。日比谷高校(東京都千代田区)は、4月15日から学習支援としてオンライン授業を開始。5月7日から正式な授業とした。当初は不慣れな教員も、ITに詳しい教員の指導を受けて全員ができるようになったという。
「事前アンケートで、全家庭にネット環境があることはわかっていましたが、家族が使うためスマホで授業を受けた生徒もいたようです」(武内彰校長)
6月29日には全学年が通常の対面授業に戻る。
「教科により進度に多少のばらつきはあるが、逆に進んでいる教科もあり、トータルでは大幅な遅れはない。夏休みを短縮し7月末まで授業を行う予定で、その時点では5日程度の遅れで済みそうだ」
現在は第2波、第3波を想定し、臨時休校になってもオンライン授業にシフトできる態勢を整えている。武内校長は、受験生に向けてエールを送る。
「本校の生徒に限らず、受験生は何らかの理由があって志望大学を決めたはず。弱気にならずに第1志望を貫いてほしい。今年の受験生は大変な思いをしてきたが、長い人生からみれば、プラスになることもある」
海城高校(東京都新宿区)は、4月末からオンライン授業を配信。6月に、出席番号の奇数と偶数に分かれて隔日登校を開始。学習指導部の森昭大部長は言う。
「日々の授業を配信することに主眼を置いた。受験をどうするかよりも、授業の遅れの方が心配でした」
オンラインで授業を継続はしたが、内容が定着しているか、生徒の反応を見られないもどかしさもあったという。教員が落ち着いていたせいか、受験生もそれほど動揺はしなかった。
「入試施策が二転三転しましたが、共通テストが英語外部試験や記述でごたごたし、またか、と冷ややかに見ていました」(森部長)