今回感じたのは、常に選択肢をぶら下げられ、選択を強要される徒労感だという。

「文科省もいろいろと熟考されたのでしょうが、それがいたずらに現場の混乱を招いている。公式発表の前にマスコミに取り上げられ、不安になった保護者や生徒からの問い合わせもあった。『今まで通り』、という英断も必要ではないでしょうか」(同)

 都立白鴎高校(東京都台東区)の善本久子校長は、「先が見通せないことが一番困っている」と話す。

「この先どうなるかわからないなかで、準備をしなくてはならない。第2波、第3波が来れば入試が予定通りできない可能性もある。生徒の不安に寄り添いながら対策していきたい」

 現在は3密を避けて時差登校している。高3生は7時半に登校し、朝の講習を2コマ受けて遅れを補う。9月には通常の進度に追いつく予定だという。

「出題内容について文科省は大学に配慮を求めるが、国立大学協会は各大学の判断に任せるとする。学習計画に影響を及ぼすので早急に示してほしい」(善本校長)

 混沌とした状況で、大学には、アドミッションポリシーを明確にすることを望む。そして善本校長はこう言う。

受験生全員に配慮し、公平性を保つのは難しい。大学が方針をはっきりと示せば、受験生もそれに向かっていける」

(ライター・柿崎明子)

AERA 2020年8月3日号より抜粋