リーマン・ショックをしのぐともいわれるコロナ不況。企業の倒産が相次ぎ、解雇や雇い止めにも拍車がかかっている。AERA 2020年7月20日号で掲載された記事から。
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「コロナ恐慌」という表現も、あながち大袈裟ではなくなってきたかもしれない。
総務省が6月末に発表した5月の完全失業者数は198万人に達し、前年同月比33万人増、前月比9万人増で、リーマン・ショック以来の膨張となった。
厚生労働省によれば、非正社員の解雇や雇い止め(契約解除・不更新)も7月1日の時点で3万人を突破したという。緊急事態宣言から1カ月弱の4月末の時点では、まだ4千人に満たなかったのに、だ。
無論、ここまで急激な雇用調整が行われているのは、雇う側も火の車と化しているからだ。7月7日に東京商工リサーチは、コロナ関連の経営破綻が全国で312件に達したと発表した。しかも、その数には負債1千万円未満の小規模・零細企業や個人事業者は含まれていない。
■米国なら「一時解雇」
また、前出の総務省調査によれば、緊急事態宣言とともに大量発生した休業者の数は、5月の時点で前年同月比274万人増の423万人だった。その中には、形式的に「休業扱い」になっているものの、実際には勤務先から退職を迫られているというケースも紛れている。いわゆる「退職勧奨」で、実質的には失業状態に極めて近い。
こうしたケースは米国なら「一時解雇」とみなされるが、日本の統計では就業者にカウントされ、失業率には反映されない。一方で、厚労省が発表した5月の有効求人倍率は1.20倍で、46年4カ月ぶりの減少幅となっている。
めぼしい求人がなく、再就職活動がままならない失業者もいるはずだ。ところが、表立って求職活動を行っていないと統計上は「非労働力人口」に該当し、失業者とはみなされない。日本における5月時点の失業率は2.9%(総務省調査)で、諸外国と比べれば低く見えるが、あくまで氷山の一角を反映した数字にすぎないのだ。(ライター・大西洋平)
※AERA 2020年7月20日号より抜粋