「コロナのようなままならない問題では、原因の可視化で社会全体が『コントロール感』を回復させるという考え方があります。手っ取り早いのは特定の人たちを選んで攻撃することです」

 クラスターが発生しているホストクラブやキャバクラだけでなく、居酒屋も一緒くたにするような都の発表。歌舞伎町の居酒屋店主は「補償もせずに乱暴に『夜の街』と言ってお客さんを減らすやり方に納得できません」と憤る。前出の猪口さんは背景をこう説明した。

「網を広げて検査をする中で、新宿や池袋の方でしかまとまって確認されておらず、他の街では通常の検査をしていく中では引っかかってこないということです。現状は、地域的にも職業的にも偏った状態で、若者の感染が広がっている状況だと考えています」

 感染拡大の震源地となっている新宿区だが、アエラが入手した資料には、さらなる危機を感じさせる、驚くべきデータが記載されていた。

 新宿区が区医師会と協力して行うPCRセンターの検査結果を示す「実績報告」。5月の連休前、検査数は54~62件程度で、陽性率は2.0~8.2%で推移していたが、その後の陽性率は跳ね上がる。6月30日~7月3日の期間は検査数92~140件で、陽性率は29.2~37.3%と文字通りの桁違いだ。

 東京都全体の検査の陽性率(7月8日)は5.6%。いくら新宿区が「夜の街」の関係者を中心に検査しているとはいえ、これは検査数が少ないだけで、検査数を増やせば増やすだけ、新規感染者がザクザク出てくる状況ではないのだろうか。都内のある医師も指摘する。

「この陽性率を見れば、感染が拡大しているのは明らか。検査数が足りておらず、感染者数が過少に評価されています」

(編集部・小田健司)

AERA 2020年7月20日号より抜粋