ウィズコロナの時代、口腔ケアを後回しにするリスクは大きい(写真:紀尾井町プラザクリニック提供)
ウィズコロナの時代、口腔ケアを後回しにするリスクは大きい(写真:紀尾井町プラザクリニック提供)

 自粛中、歯科治療などを控えていた人は多い。だが口腔ケアとウイルスの感染や重症化には、深い関係があることがわかっている。その関連性を取材した、AERA 2020年7月13日号の記事を紹介する。

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 厚生労働省は4月、新型コロナの感染拡大を防ぐため、日本歯科医師会に対し、「緊急性がないと考えられる治療については延期することも考慮すること」などと要請を出した。

 日本歯科医師会の調査によると、今年4月の受診件数は、昨年同時期より2割減ったという。同時に現場の歯科医師からは、「治療を自主的に延期していた患者のう蝕や歯周病が重症化していた」との声が寄せられている。治療中の人に限らず、テレワークなどで直に人に会う機会が減ったことから、歯磨きの回数が減ったり、口腔ケアがおろそかになったりしている人は多いだろう。だがウィズコロナ時代、口腔ケアを怠ることは単なる口の汚れ以上のリスクが伴う。口のなかが汚れると、感染症にかかったり重症化したりするリスクが上昇することがわかってきたからだ。

 すでにインフルエンザについては、冬場6カ月間に歯科衛生士による口腔ケアを受けた人のインフルエンザ発症率が1%だったのに対して、受けなかった人は9.8%と、約10倍の差が出たことが発表されている(2006年「日本歯科医学会誌25号」)。なぜ、口のなかが汚いとウイルスに感染しやすくなるのか。神奈川歯科大学副学長の槻木恵一教授はこう解説する。

「通常なら、唾液中にある免疫物質がウイルスを取り囲み、粘膜内に侵入しないようにブロックします。そして唾液の自浄作用によって洗い出されます。しかし口腔内に歯周病菌などの病原菌があると、ウイルスの侵入を手助けする『プロテアーゼ』という酵素が出てウイルスが活性化してしまい、感染リスクを高めてしまうのです」

 7月上旬、槻木教授はインフルエンザと同じようなことが新型コロナに関してもいえる可能性があるとする論文を発表した。

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