「ウイルスは口腔内に入るとたんぱく質の受容体と結合しますが、新型コロナを受け入れる受容体とプロテアーゼが、歯肉や舌の上で、混在していることがわかりました。セットで同じ場所にあったということは、口腔内から新型コロナに感染するリスクがあるといえます」(槻木教授)

 口腔内には善玉も含めて100億個もの細菌が常に存在している。歯周病は歯に付着した細菌の塊である歯垢が引き起こす炎症と、それに対する生体反応により、歯を支える歯周組織が失われる病気だ。

 それと同時に、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞、認知症など、さまざまな病気に悪影響を及ぼすことがわかってきている。唾液中にある歯周病菌が、歯周ポケットや虫歯で開いた穴を通じて、血管に入り、全身をめぐってしまうのだ。この歯周病菌が、ウイルス性感染症の重症化リスクを高めることもわかっている。鶴見大学歯学部の花田信弘教授はこう話す。

「毒性の強い歯周病菌が歯周ポケットや虫歯の穴から血液中に入ると、全身に細菌がめぐる菌血(きんけつ)症が起きます。ウイルス性肺炎を発症した人の口腔内で歯周病菌が血液中に入ったことにより、二次性細菌性肺炎を引き起こすと死に至る可能性が高くなります」

 ウイルス性肺炎を発症した状態で菌血症になると、免疫システムが暴走して正常な細胞を攻撃し、炎症を起こす危険性が高まる。さらに、細菌が肺に達して、二次性の肺炎を起こす可能性がある。

「新型コロナでも、ウイルス性肺炎が落ち着いた後に二次性細菌性肺炎を引き起こすことが報告されており、歯周病菌と新型コロナ重症化の関連性が推察されます」(花田教授)

 他にも、新型コロナ患者が誤嚥(ごえん)性肺炎を発症し、重症化する例も報告されている。誤嚥性肺炎は歯周病菌などが気道を通して肺に入ってしまうことで起きる。飲み込む力が衰える高齢者に多く、舌に付いた食べかすやはがれ落ちた粘膜の細胞からなる舌苔(ぜったい)を就寝中に飲み込み、肺に入れてしまうことがあるという。ではどうすればいいのか。花田教授はこう話す。

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