お金が誰に渡って、何が実現されるのか可視化できるのがクラウドファンディングのよさで、支援する人とされる人の顔の見える関係が大切です。だから、実際にお金を受け取る人が前面に立って集めるのが基本です。ただ、誰もが経済的な損失を受けている中で支援してもらうには大きな動きに集約する必要がありました。パブリックなプロジェクトとしてメッセージを発信し、幅広く支援を求める取り組みにしたかったんです」

 支援が必要な店舗や事業者が自ら声を上げにくい事情もあった。石田准教授はこう解説する。

「普通、寄付を求める際は“こんなことをしたい”と発信して、共感した人が寄付します。しかし今回必要なのは、事業存続のお金。みんなが困っている中で、資金繰りのお金をくださいと発信するのは難しいことです」

 発信の仕方を誤ると炎上の恐れもある。ファウンデーション型にして第三者が支援を訴えることで寄付を求めやすく、リスクヘッジにもなったのだ。(編集部・川口穣)

AERA 2020年6月22日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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