冒頭の男性も、「これからも趣味の登山を続けたい」との思いから寄付を決めたという。

 寄付文化に詳しい宮城大学の石田祐准教授(公共政策・NPO論)はこのコロナ禍で、自らの趣味や生活を守ろうとする寄付が増えたと語る。

「感染拡大とそれに伴う休業などで、身近なものに影響がありました。被災地とそれ以外が明確な自然災害と比べ、みんながダメージを実感した。以前は寄付になじみがなかった人も、自分の生活や趣味を守るための寄付をしています」

 行きつけの飲食店にデポジットを入れたり、趣味に関するプロジェクトに出資したりするケースが増えているのだ。

 山小屋エイド基金を実施しているクラウドファンディングサイト「モーション・ギャラリー」では、ミニシアター・エイド基金やブックストア・エイド基金など様々な「趣味や文化を守る」プロジェクトが立ち上がった。なかでも小劇場への資金分配を目的としたミニシアター・エイド基金は、1カ月で約3万人から3億3千万円超を調達した。モーション・ギャラリーの大高健志代表はこう話す。

「多くの人が自分のライフスタイルを考えたうえでお金を出してくれている。ある意味、将来的な自己利益のための出資で厳密な寄付とは少し異なるかもしれませんが、クラウドファンディングの役割がこれまで以上に浸透してきていると感じます」

 もうひとつ、コロナ禍での寄付で特徴的なことがある。クラウドファンディングはこれまで、実際にお金を受け取る人がプロジェクトを立ち上げ、周知、宣伝に奔走するのが一般的だった。しかし、山小屋エイド基金やミニシアター・エイド基金は第三者がお金を集め、配分するいわば「ファウンデーション」だ。別のクラウドファンディングサイト「レディーフォー」でも、感染拡大防止に取り組む医療機関などへ助成するファウンデーション型のプロジェクト「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」が立ち上がり、6月11日までに国内のクラウドファンディング最高額規模となる5億5800万円あまりを集めている。モーション・ギャラリーの大高代表はこれらを、コロナ禍特有の動きだと話す。

次のページ