浜矩子「守るべき市民への暴挙が起きる米中は、大国に値しない卑国である」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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浜矩子「守るべき市民への暴挙が起きる米中は、大国に値しない卑国である」

連載「eyes 浜矩子」

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浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演

浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演

写真:gettyimages

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 経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。

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*  *  *
 二つの国で二つのとんでもないことが起きている。「二つの大国で」という書き出しにしようとして、やめた。こんなにもとんでもないことが起こる国々を、「大国」とは呼べない。その名に値しない。

 大国の名に値しなくなっている二つの国は、アメリカと中国である。アメリカでは逮捕時の警察官の仕打ちによって1人の黒人男性が死亡した。窒息死とみられている。「息が出来ない。助けてくれ」という度重なる懇願にもかかわらず、警官は彼の首から頭部を8分強にわたって膝で強く押さえつけ続けた。この警官はその後起訴されている。5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで起こった事件である。残虐過ぎる。

 この事件を受けて、アメリカ中で黒人を中心とする抗議デモが沸き起こった。1960年代以来の規模に達しているという。アメリカ警察による黒人差別は、今に始まったことではない。アメリカ現代史を連綿と貫く疎ましき縦糸だ。だが、新型コロナウイルスによる黒人死亡率の高さ、彼らの経済的困窮の深さが、今回の事件に対することのほか大いなる憤怒を呼び起こした。

 この憤怒をさらに煽り立てているのが、トランプ大統領の態度だ。デモに繰り出した市民を暴徒呼ばわりし、武力制圧を急げと州知事たちをけしかけている。けんか腰丸出しである。明らかに警察側をえこひいきしている。一国の最高政策責任者がやることではない。

 中国では、本土の香港いじめが極限的レベルに達している。5月28日の全人代(中国全国人民代表大会)で、「香港特別行政区における国家安全保護に関する法律制度」、通称「香港版国家安全法」の導入方針が採択された。本来であれば、香港立法会の議決を経るはずだが、それを無視した。頭ごなしで、本土と同様の治安体制を香港に適用しようとしている。

 そうなれば、本土と香港の間に存在する「一国二制度」は形骸化する。心ある香港市民たちは、ここに民主主義の終わりの始まりを見て、悲痛な叫びを上げている。その声が胸に刺さる。

 何という暴挙。この両国は、大国の名に値しないどころではない。卑国だ。卑劣で卑しい。

AERA 2020年6月15日号


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浜矩子

浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演

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