もし相手が攻撃してきたら。その時は、あくまで仮定の話だとしてこう話す。

「警察権に基づいて反撃します。警察の正当防衛と同じと考えていただくとわかりやすいと思います」(同)

 ここまでは「国籍不明機」の話。UFOのような「未確認飛行物体」について、防衛省は次のような見解を示す。

「まず、UFOがレーダーに映るのかという問題があります。アメリカの国防総省が公開した4月の動画もレーダーに映りスクランブルがかかったのでなく、たまたま訓練中にパイロットが出くわしたもの。それは『機』ではなく『物体』、つまり『未確認物体』となります。未確認物体の場合、レーダーに映っていませんからスクランブルはかかりません」

 UFOと言えば、忘れてはいけないのが早稲田大学名誉教授で物理学者の大槻義彦氏(83)だ。90年代、科学者の立場から「UFOは存在する派」とテレビで激しいバトルを繰り広げてきたことを覚えている読者も多いだろう。そんな大槻氏に、今回の「謎の空中現象」をどう見ているか聞くと、

「明らかな自然現象です」

 とバッサリ。映像には明らかに不審点があると言う。

「もし、パイロットが不審な飛行物体を目撃してレーダーで捕捉できないとなれば、捕捉レーダーを照射して追尾するはずです。そういうことを一切していません。つまり、パイロットは、不審な物体を深刻なものと考えていないわけです」

 もしプラズマであれば、白く輝いて映るが、映像では黒く映っているからプラズマではない。昆虫とも違う、という。大槻氏の見立てはこうだ。

「雲の中に発生した乱流にできた穴です」

 氏によれば、「UFO」に見えるのは乱流の激しい回転によって水蒸気が吹き飛ばされてできた穴で、水滴の水が薄くなり穴となっているだけと話す。

「黒く見えるのは太陽光線の加減で、途中で光線が当たると白くなっているんです。乱流というのは乱れているわけですから、複雑な運動をするのは当たり前。パイロットたちも、自然現象として驚いているわけです」

 結局、UFOは存在するのか。誰にも正解はわからない。そう、信じるか信じないかは、あなた次第だ。(編集部・野村昌二)

AERA 2020年6月15日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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