しかし、コロナ禍では、病院を受診するという行動そのものが制限された。自分は感染しているかもしれない。そうした不安を抱えた人の窓口になった「帰国者・接触者相談センター」も、その受付方法は電話だ。聴覚障害を持ったある女性は自らの体験をこう語る。

「家族が体調不良で不安になって、自分が聴覚障害者であることをFAXで伝えた上で、病院に問い合わせをしました。けれども、返信は2日後でした。その間、不安で仕方がなかった。さらに、ようやく届いたFAXに『悪化した場合は電話でご相談ください』と書かれていてガクッとしました。どうやって診察を受けたらいいのでしょうか」

 聴覚障害を持つ人は、手話だけでなく、相手の口の動きがコミュニケーションの重要な手がかりだが、コロナ禍では誰もがマスクをつけているので、それが使えない。筆談では相手との距離が近くなり不安。普段であればお願いする手話通訳も、通訳者の感染リスクを考えると頼みにくい状況だという。(編集部・中原一歩)

AERA 2020年6月8日号より抜粋