アクテムラはIL‐6が暴走する疾患の全てに有効なので、最近では白血病のCAR‐T細胞療法に伴うサイトカインストームを抑える薬としても承認されました。

 こうしたことをよく知る中国人医師が最初に新型コロナ肺炎の患者への投与を試み、症状が改善したと聞いています。国内でも大阪はびきの医療センターが、集中治療室での治療が必要になった重症患者9人に投与し、有効だったとの報告が出ています。欧米でもアクテムラの販売がここ数カ月で伸びているそうです。

 研究開発を始めたのは30年以上も前のことで、アクテムラがこのような形で再び脚光を浴びるとは思ってもみませんでした。現在、国内外で臨床試験が始まりつつあり、私もその結果をドキドキしながら待っています。有効性と安全性が確認され、新型コロナの患者さんの命を救うことに役立つ日が来ることを、心から願っています。

(構成/編集部・石臥薫子)

AERA 2020年6月1日号