4月28日に通知された厚労省の文書では、感染経路が特定されない場合も業務による感染の蓋然性が高い場合、労災の対象となると記されている(撮影/写真部・高野楓菜)
4月28日に通知された厚労省の文書では、感染経路が特定されない場合も業務による感染の蓋然性が高い場合、労災の対象となると記されている(撮影/写真部・高野楓菜)

 仕事で新型コロナウイルスに感染したら、労災認定されるのか。医療現場ですら、不安の声があがっていた。厚労省は新文書を通知したが、補償は各地の労基署の判断になるという。AERA 2020年5月18日号から。

*  *  *

 4月、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が自身に届いた看護師の声としてツイートした内容にざわついたのは、医療関係者だけではなかった。それは、こんな内容だった。

「職場でコロナに感染しました。労災申請しようと思いましたが、労基署に問い合わせたら、感染ルートがわからないと労災が認められないと言われました」

 この苦境を紹介した上医師のツイートは5月7日現在、約7万4千件リツイートされている。

「事実関係の認定が困難とのことなのかと思います」

「戦場で負傷しても、どこから弾が飛んできたか立証しろとでも?(中略)何にでも形式や手続を要求するこの国のやり方に心底うんざりします」

 新型コロナウイルスの労災をめぐっては、2月3日、厚生労働省が全国の労働局に出した文書があり、「業務又は通勤に起因して発症したと認められる場合には、労災保険給付の対象となる」と記されている。

 日本医療労働組合連合会中央副執行委員長の三浦宜子(よしこ)さんはこう話す。

「感染ルートが特定できなければならないと読めるような記述になっています。『それならば労災の対象にならないのではないか』という心配の声も出ていました」

 だが、厚労省は4月28日に新たな文書を通知した。そこには「調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性(がいぜんせい)が高く、業務に起因したものと認められる場合には、(中略)労災保険給付の対象とする」と明記されている。具体的な取り扱いとして、国内の「医療従事者等」の場合、業務外で感染したことが明確に分かっている場合を除いて、原則として対象とすることとしている。

「方針転換というわけではなく、今回のコロナウイルスの特性に鑑(かんが)みて、取り扱いをより明確化したということです」と、厚労省の担当者は説明する。

次のページ