新型コロナと普天間・辺野古問題は全く別次元の問題だ。しかし、新型コロナ対策を誤れば玉城知事の求心力が失われ、基地問題にも影響するのは避けられない。政府はその相関を十分認識した上で、非常時にもかかわらず、あえて県政に「圧力」をかけたとの見方は多い。野添さんはこう憤る。

「沖縄県がコロナ対応に追われている中での突然の設計変更申請は、弱みにつけ込んだ、『卑怯』な行為だという印象を持ちました。玉城知事も辺野古の工事中断を菅義偉官房長官に要請し、コロナという『国難』に一致団結して専念するため『休戦』しようというムードだったはず。軟弱地盤の問題も十分説明がなされない中、『不要不急』の申請だったと思います」

 そもそも、地盤改良をしてまで工事を進めるという設計変更の趣旨そのものが、沖縄側の思いを無視したものだ。野添さんは沖縄の米軍基地の整理縮小を考えるため、沖縄県が設けた有識者会議「万国津梁(ばんこくしんりょう)会議」の副委員長を務めた。

 同会議は3月26日、軟弱地盤の問題などから「(辺野古新基地の)完成は困難」と指摘する提言を発表。辺野古新基地建設は、市街地と近く危険性が高い普天間飛行場を速やかに返還するためだったはずが、政府自身も工事完了までに12年かかると公表している。提言は「(辺野古に代わる)普天間飛行場の速やかな危険性除去と運用停止を可能にする方策を具体化すべきだ」としていた。

 提言は形式上は知事への答申だが、日本全体で沖縄の基地負担軽減と安全保障を議論することを求める内容で、政府や本土世論に対するアピールという面が大きい。野添さんは提言の趣旨をこう説明する。

「この問題を日本全体、日米間でもっと議論しようというのが最大のメッセージです。まずは『喫緊の課題』として辺野古計画の見直しを訴える必要性をわかってほしかった」

 提言書は、辺野古新基地の総工費は政府試算でも当初想定の2.7倍の9300億円に上ることを受け、「莫大な費用を、別の用途のために使用した方が、日本の政治や経済、さらには安全保障にとってはるかに有益」とも指摘している。

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