今春、予備校業界でAI導入が一気に広がっている。難関国公立大や医学部受験者が多い駿台予備学校も、高卒クラスでAI教材を本格導入した。こちらは講師によるライブ授業は継続し、AI教材による個別の学びと集団授業を連動させたカリキュラムを組む。EdTech(エドテック)事業担当の小澤尚登さんはその意義をこう話す。

「atama+でしっかりと基礎を固めた上で、同じ分野のライブ授業を翌週に受けることでより深い理解ができ、相乗効果が見込めます」

 駿台は、より思考力が試される国公立の二次試験向けにも、新たな教材開発に取り組む。タッグを組むのは東大発のAIベンチャー、日本データサイエンス研究所。「現在、エース級の講師の指導ノウハウをAIに落とし込んでいる最中。今秋には第1弾として物理・化学で新教材を投入する」(小澤さん)という。

 一方、河合塾が開発し、昨年12月から提供するのはAI教材「河合塾One」。こちらは部活などで忙しい、近隣にないなどの理由で予備校に通えない生徒が主なターゲットだ。AIが最適化したカリキュラムと教材を提供する。国立研究開発法人産業技術総合研究所が開発したAIを活用。河合塾Oneの畑秀史取締役は「最適化するアルゴリズムの生成に河合塾の講師陣の長年の知見を生かしている。そこが他社との違いです」と自信を見せる。(編集部・石臥薫子)

AERA 2020年3月30日号より抜粋