医師や入院患者に感染者が相次いだ済生会有田病院(和歌山県湯浅町)が4日、外来診察を再開。入り口には「安全宣言」が出されていた (c)朝日新聞社
医師や入院患者に感染者が相次いだ済生会有田病院(和歌山県湯浅町)が4日、外来診察を再開。入り口には「安全宣言」が出されていた (c)朝日新聞社
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 中国の専門家チームが新型コロナウイルスには感染力に差がある2タイプがあると発表するなど情報が刻々と変わっている。AERA2020年3月16日号に、「いまこそ冷静に」と医師が語ったこととは。

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 感染拡大を受け、安倍晋三首相の突然の「要請」で小中学校・高校の全国一斉休校が始まるなど、新たなフェーズに突入した新型ウイルス問題。不安が広がる今、感染症対策に詳しい2人の臨床医に、いまやるべきことを聞いた。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗員乗客らも含めて感染者が1千人を突破。韓国やイタリア、イランとともにWHO(世界保健機関)が「最も感染が懸念される」と名指しした日本では、季節性インフルエンザのように誰から誰に感染したのかがわからない「地域内感染伝播」が既に起こっているとみていいのだろうか。

「今はまだ、その段階までは進行していないと思います。東京の屋形船、大阪のライブハウス、北海道の展示会など集団感染が明らかになりましたが、そこからの拡大を防ぐべく対応が取られている。また、誰からうつされたかわからないケースでも、その人から先をきちんと押さえれば感染拡大は止められる。うまくいけば4月いっぱいでいったん収束状態に持ち込めるのではないでしょうか」

 国立病院機構三重病院臨床研究部長の谷口清州医師は、現状をそう分析する。そして、デマや根拠のない不安説の流布に警戒を強め、まだ感染者が出ていない「空白県」を含めて、調査のためのPCR検査の実施を考えている。

「例えば三重県では臨床的に疑われた約60人分の検体が検査されていますが、最初の渡航歴のある人以外、全部陰性でした。本当に広まっているのであれば、いくつかは陽性反応が出ていても不思議はないはずです。なので、地域でランダムに風邪の人や肺炎の人から検体をもらって何%ぐらいが新型コロナの陽性になるのか評価する必要があると思います」

 検査の目的は診断のためではなく、地域リスクを測る調査分析のためにある。谷口医師が提唱するような検査を全国的に広げ、「SARS2」とも称される新型コロナの検証を進めるべきだろう。そうでなければ、唐突に始まった一斉休校をいつまで続けるかなどの「出口戦略」は見えてこない。

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