一方で、政府の専門家会議がまとめた受診の目安も議論を呼んでいる。発症の不安を抱えたまま37.5度以上の発熱が4日以上も続かなければ検査対象にならない「定義」に、けいゆう病院(神奈川県)の菅谷憲夫医師は、こう異を唱える。

「検査体制を整備して早期診断、早期治療に向かうべき。新型コロナに有効と期待される抗インフルエンザ薬のアビガンだが、これがインフルで有効なのは発症後48時間以内。新型コロナでは、4日間待って重症化しないという医学的根拠はなく、その間に治療の機会を失うおそれがある。仮にPCR検査ができなくても、レントゲンなどで新型肺炎の疑いが見つかれば、入院隔離して周囲への感染を防止し、適切な治療に踏み切るべきだ。中国のガイドラインでは、すでに抗HIV薬の早期投与が勧奨されている」

 3日、WHOは季節性インフルエンザより感染力は高くないものの、重症化率は高いと指摘した。菅谷医師は、いま一度認識を改めるべきと訴える。

「当初、新型コロナは季節性インフルエンザと同等という甘い認識が専門家やマスコミにより国民に広がったのが問題だった。それでクルーズ船にスーツとマスクの軽装で検疫官も乗り込んだと思われるが、中国では医療従事者の感染率も凄まじく、何人もの医師が命を落としている。普通、季節性インフルエンザの治療に当たる医師が死ぬことなど考えられません」

 正体の見えないウイルスとの闘いは続く。(編集部・大平誠)

AERA 2020年3月16日号

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