ごく普通の制服姿の写真さえも、事件を引き起こす可能性がある。安全だけを考えるなら、子どもの顔写真はもちろん、近況なども一切SNSに載せるべきではないということになる。だが、こうした投稿を全否定することもできない。

 「SNSでしか他の親とつながることができない保護者もいるのが現実です。写真を載せることでコミュニケーションをとり、親の精神的な不安がなくなって前向きに育児ができるのは良さでもあります」(高橋さん)

 親のSNSへの投稿が、子どもにとってアドバンテージになるという声もある。

 デザイナーのヤマシタマサトシさん(36)は、ツイッターやnoteなどの投稿サイトに、「顔出し」して意見を投稿している。それが仕事につながったこともあり、フリーランスとして働くなかで、顔出しのメリットを感じている。

 6歳と3歳の娘の写真も、SNS上にアップしてきた。家族写真、休日のお出かけ。娘の顔を隠すことはしていない。娘の成長を多くの人と分かち合い、インターネットを通じて支え合っているという感覚がある。

「万が一自分の身に何か起きたとき、子どものことを知ってくれている人がいるという安心感がある。それに将来、娘がSNSを始めることになったとき、イチから始めるのとインフルエンサーの子どもとして始めるのでは、注目のされ方にも雲泥の差があると思うのです。いずれ親のフォロワー数が資産として子どもに引き継がれる時代がくるかもしれない」

 もちろん、リスクも意識している。

 ある日、アダルト色の強いアカウントにフォローされていることに気が付いた。娘が性的な目で見られるかもしれない。そんな不安がよぎり、SNSに掲載する写真をさらに慎重に選ぶようになった。

「将来成長した娘も含めて誰に見られても問題ない写真を掲載するのはもちろん、投稿を見た人が、どう思うのかも考えなければいけません。娘が10歳くらいになったら、これからどうSNSを使っていきたいか相談するつもりです」

 他人の顔写真を勝手にSNSに上げるのはよくない、と認識している人は多いだろう。だが、我が子の写真には気が回らない人もいる。SNSに投稿する以上、リスクと無縁でいることはできないが、少なくとも注意点をきちんと知っておく必要はある。何げなく投稿した写真が、子どもを危険にさらす可能性があることを忘れてはいけない。(編集部・福井しほ)

AERA 2020年3月2日号

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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