「日本人の温かく良心的な振る舞いに注目している。中国に対する思いやりに心から感謝を表したい」

 企業から中国への支援が相次いでいる。これまで、原料生薬の調達などで中国とはゆかりの深い漢方薬大手のツムラ、中国にも進出している自動車のホンダグループや、製薬大手のエーザイなどの企業が、義援金を送った。在日中国大使館のホームページによると、茂木敏充外相も1月26日にあった王毅(ワンイー)外相との電話会談で、日本政府側に全面的な支援をする用意がある旨を伝えている。

 外務省緊急・人道支援課の担当者は、「断続的に中国側と協議している。(正式な)要請を受け次第、検討することになる」と話す。

 2月7日現在、新型肺炎は依然として感染拡大の一途を辿っている。必要とされているのは、ヘイトより支援だ。

 ゆかりの土地からも強い思いが寄せられた。

「武漢、がんばれ!」

 2月2日、大分市の中心部に、市民の声が響いた。武漢市民や、対応を迫られている武漢市を励ますための催しを大分華僑華人会が開いた。大分市と武漢市は友好都市だ。この日は地元の農作物も販売され、売り上げの一部は支援物資の購入費に充てられるという。同会の黄(こう)梅雄会長(71)は「本当に早く収まってほしい。心が痛みます」と話した。

 武漢市出身で大分市に住む日本画家の沈露露(ちんろろ)さん(45)も取材に応じた。

 春節には武漢市に暮らす父母が大分にやってくる予定だったが、新型肺炎問題でかなわなかった。

「今は2人とも自宅のマンションに閉じこもっている状態です。食料は春節前にたっぷり買い込んでいたので1カ月分くらいはあるようですが、体調が心配で毎日電話で連絡を取り合っています。日本の人たちの支援はとても心強い」(沈さん)

 中国の都市と友好都市の関係がある自治体でも、動きが出始めている。神奈川県内では川崎市や厚木市がそれぞれ友好都市の遼寧省瀋陽市、江蘇省揚州市に支援物資をすでに送った。長崎県は、武漢市がある湖北省と友好協定を結んでおり、支援を検討している。外出禁止措置をいち早く出した浙江省温州市と友好都市である宮城県石巻市も、同様に検討中だ。

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