だが、支援が必要なのは行政当局や現地にとどまる人たちだけでない。前出の高橋准教授は指摘する。

「医療関係者、検疫官、チャーター機のパイロットなど、真剣に職務遂行している人たちがいます。過酷な状況下で職務に従事していることを支持するステートメントが重要です」

 東日本大震災では、被災者の支援にあたる自治体職員や、行方不明者の捜索にあたる自衛隊員らの心のケアが問題になった。

「最前線で対応や救護にあたる関係者の心理的な負担は計り知れず、政府やメディア、上司による支持の表明があるだけでも、事態収束後に心の傷を負わなくて済む可能性が高まります」(高橋准教授)

 個人にできることはあるのか。

病気は社会が引き起こす』(角川新書)の著書がある木村知医師(51)は「個人レベルでは、パニックを起こさず感染を広げない姿勢を示すことが大きな支援になる」と指摘する。

 木村医師が注意喚起するのは、新型ウイルスに感染しても風邪のような軽い症状を呈す「元気な風邪引きっぽい人」が普段通りに出歩き、感染者を増やすケースだ。「高齢者や持病があり重症化しやすい人にうつしてしまうのが一番まずい」という。

「インフルエンザだと仕事を休めるが、風邪だと休めない人が多い。新型肺炎は風邪と区別がつかないケースも多いようだが、調子の悪い人は出社せずに休んでほしい。企業にはその風土作りが求められ、休めるようにする政府の施策も必要です」

「休めない」という考えを改めることも、支援の一歩だ。(編集部・小田健司)

AERA 2020年2月17日号