その後、同校の医療的ケアを指導する担当医も話し合いに加わり、実施の方向は確認されたが結論は持ち越された。

 一気に事態が動いたのは、今年1月にあった4度目の話し合いだ。学校長、担任、担当医、看護師、江田医師ら十数人が出席。最初に優菜さんの夜間の様子を映した動画を見て、ちひろさんが自宅での酸素を投入するタイミングや量について説明すると、これまで日中の元気な様子しか知らなかった学校側も、酸素療法の態勢をつくる必要性を認識した。看護師も具体的な質問を重ね、付き添い無しでのケアが決まったという。

 決め手となったのは、江田医師の「何かあれば私に連絡していただいて構いません」の言葉だった。同校校長は言う。

「学校は病院のように医師が常駐しているわけではなく、医師からの指示書だけでケアを実施するのでは対応に不安がある。今回は主治医の先生が話し合いの場にも足を運んでくださり、万一のときには相談ができる態勢が整ったことが大きかった」

 校長によると、同校では医療的ケアが必要な児童生徒が約40人いるが、担当医の巡回診療は月に1度しかなく、個々の児童生徒のマニュアルなどの作成がなかなか進まないという。今後、巡回診療の回数を増やすことや、家庭医や主治医との連携を深めていければと語る。

 江田医師も「今回のケースに限らず、学校が必要なときに遠慮なく主治医に相談できる、風通しの良い関係があたりまえになってほしい」と願う。

 ちひろさんは言う。

「ほかにも酸素療法をしているために学校をあきらめているお子さんもいます。うちの子だけで終わるのではなく、この前例をほかのお子さんやほかの学校につなげていけたらと願っています」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2020年2月10日号より抜粋