都立砧公園の一角で進むインクルーシブ遊具の設置工事の現場。都議会で提案した都議の龍円愛梨さんは息子と一緒に完成を心待ちにしている(撮影/写真部・東川哲也)
都立砧公園の一角で進むインクルーシブ遊具の設置工事の現場。都議会で提案した都議の龍円愛梨さんは息子と一緒に完成を心待ちにしている(撮影/写真部・東川哲也)
都立砧公園に新たに設置される3連ブランコ。背もたれのあるシート型や円盤型は体幹が弱い子も利用できる(写真:東京都提供)
都立砧公園に新たに設置される3連ブランコ。背もたれのあるシート型や円盤型は体幹が弱い子も利用できる(写真:東京都提供)

 公園にある遊具は、健常児向けに設計されているものがほとんどだ。だが、障害児も一緒に遊べる公園を作ろうという動きが、始まっている。AERA 2020年1月27日号で、東京都の取り組みを取材した。

【都立砧公園に新たに設置される3連ブランコはこちら】

※前編「誰もが楽しめる『インクルーシブ』な公園 求められる当事者の視点とは?」より続く

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 都立砧公園(世田谷区)と都立府中の森公園(府中市)では、今、まさに障害がある子もない子も一緒に遊べる遊具のある広場づくりが進められている。きっかけは、都議の龍円愛梨(りゅうえんあいり)さん(42)の訴えだった。

 龍円さんは6年前、アメリカで長男を出産。長男はダウン症で発達のペースはゆるやかだったが、カリフォルニア州にある自宅近くの公園では、問題なく遊ぶことができた。地面はゴムチップで舗装されているので、お尻をつけたままずりずりと自力で移動できる。ブランコにはジェットコースターの座席のような背もたれがついていて、長男一人で乗ることができた。

 だが、2歳のときに日本に帰国すると、公園に行っても息子が遊べる場所はない。17年夏に都議になった龍円さんは半年後、都議会の一般質問で「誰もが遊ぶことができるインクルーシブ公園を都内でも作るべき」と提案、都もすぐに動いた。国内にはノウハウがないため、当事者や専門家の意見を聞き、海外の公園を視察するなどして設計が進められた。

 都公園建設課長の菅原淳子さんはこう振り返る。

「事故の可能性を考えると、当初は新しい遊具を入れることに懸念もありました。でも、みなさんの話を聞く中で、私たちが障害があるお子さんにも遊んでほしいと意思表示することは、とても大切だと気づきました」

 今年3月末に完成する砧公園の広場には、シート型や円盤型のブランコ、車いすのまま中に入れる複合遊具、目や耳が不自由でも音や感触を楽しめる楽器遊具などが設置される。地面はゴムチップで舗装されているので、車いすや歩行器での移動もしやすく、体の障害を持つ子どもが地面に手やひざをついて自力で移動しても汚れにくい。囲いも設けられているので、発達障害の特性などで衝動的に飛び出していってしまう子も安心して遊ぶことができる。龍円さんはこう期待を込める。

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