紅野謙介さん、南風原朝和さん、羽藤由美さん(左から)。大学入試改革の問題提起をしてきた専門家3人が意見を交わした(撮影/写真部・小山幸佑)
紅野謙介さん、南風原朝和さん、羽藤由美さん(左から)。大学入試改革の問題提起をしてきた専門家3人が意見を交わした(撮影/写真部・小山幸佑)
検討会議の委員のメンバー/文科省のサイトから
検討会議の委員のメンバー/文科省のサイトから

 大学入学共通テストの二本柱といわれてきた、英語の民間試験と国語・数学の記述式の導入が頓挫したことを受け、「大学入試のあり方に関する検討会議」の初会合が1月15日に開かれる。押さえておくべきことは何か。3人の専門家が意見を交わした。

●鼎談参加者

南風原朝和(はえばら・ともかず):東京大学名誉教授。広尾学園中学校・高等学校長。日本テスト学会副理事長。専門は心理統計学、テスト理論。東京大学理事・副学長、高大接続研究開発センター長などを務めた

羽藤由美(はとう・ゆみ):京都工芸繊維大学教授。専門は応用言語学。コンピューター方式のスピーキングテストを開発し、同大の英語プログラムやAO入試で実施している

紅野謙介(こうの・けんすけ):日本大学文理学部教授、学部長。専門は日本近代文学。筑摩書房高等学校用国語教科書編集委員。著書に『国語教育 混迷する改革』(ちくま新書)など

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――検討会議がいよいよ始まります。英語の民間試験と国語・数学の記述式の導入を土壇場で見送るような、同じ失敗を繰り返さないために最初に押さえておくべき大事なポイントは何でしょうか。

南風原:「手段」と「目的」を取り違えないことです。英語の民間試験について、多くの課題が解決しないなか東京大学は「民間試験の受験を必須としない」方針を打ち出しました。当時、中心的な役割を果たした元理事・副学長の石井洋二郎さんが、最近出された本『危機に立つ東大――入試制度改革をめぐる葛藤と迷走』の中で、「今回の改革が失敗したのは、手段のひとつにすぎないものが目的にすり替わったからだ」と書いていますが、まさにその通りだと思います。

――検討会議の「検討事項」は、(1)英語4技能評価のあり方(2)記述式出題のあり方(3)経済的な状況や居住地域、障害の有無等にかかわらず、安心して試験を受けられる配慮(4)その他大学入試の望ましいあり方、となっています。

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英語の民間試験の構造的欠陥とは