ビックカメラグループのサービスサポートカウンターがある店舗では、有料でハードディスクなどを壊すサービスを行っている。専用機器で穴を開け、わずか数十秒で破壊される(写真/編集部・井上和典)
ビックカメラグループのサービスサポートカウンターがある店舗では、有料でハードディスクなどを壊すサービスを行っている。専用機器で穴を開け、わずか数十秒で破壊される(写真/編集部・井上和典)
機器に入れてほんの数十秒で破壊完了。ドリルで4箇所の穴が開いているのがわかる。目の前で作業してくれるので安心感もある(写真/編集部・井上和典)
機器に入れてほんの数十秒で破壊完了。ドリルで4箇所の穴が開いているのがわかる。目の前で作業してくれるので安心感もある(写真/編集部・井上和典)

 ハードディスク転売事件をめぐり、取引があった全国の自治体や省庁などが確認を急いでいる。では、私たちが使っているパソコンやスマホを売却・廃棄するときは、どうすればいいのか。AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号では、データ流失リスクを最小限に抑える方法を紹介する。

【専用機器でHDDを壊したらどうなった!? 破壊が完了したHDDはこちら】

*  *  *

 神奈川県からの使用済みハードディスク転売による情報流出は人ごとではない。コンピューターには必ず「記録媒体」が必要だ。機器が使用年数を超えた場合、廃棄は必ず問題となる。

 では現状、どう対処するのがベストなのか? 基本をおさらいしてみよう。神奈川県の事例は、その基本が守られなかったことが一番の衝撃だったのだ。

 パソコンであろうがスマートフォンであろうが、処分する時にはデータを消去する必要がある。その時の方法は、個人と企業では大きく異なる。企業・団体の場合には一括して業者に依頼するなどの手段を取ると考えられるので、先に個人の話をしておこう。

 個人の場合、とりあえずは「初期化」作業を行う。パソコンやスマホを出荷時の状態に戻すのだ。こうすれば見かけ上、データは消去されて見えなくなる。

 ただし、シンプルに初期化しただけではデータが消えるわけではない。現在のコンピューターでは、データの読み書きを高速化するため、データの本体を消さず、「データの読み込みのための住所」にあたる部分だけを消す処理を行う。だから短時間で使えるようになるのだが、この仕組みを知っていれば、消してしまったはずのデータを再び読み出すことも可能になる。万が一の際のデータ復旧に使われる技術であり、犯罪捜査や裁判資料の復旧のための「デジタル・フォレンジック」にも使われる技術だが、悪用されればデータの抜き取りにも使える。

 そのため、データを消す場合には、「データ消去ソフト」を使う場合が多い。見かけ上データを消すのでなく、時間をかけて実際にデータを書き込み、元のデータを取り出せないようにするのだ。こうしたソフトはセキュリティー対策ソフトメーカーから販売されている。

次のページ
「暗号化する」とは?