ただ、いまはデータ消去ソフトを使うよりも簡単に、トータルでのセキュリティー対策を向上させる方法がある。ハードディスクなどのストレージを「暗号化する」ことだ。

 現在のパソコンやスマホは、ストレージ全体を「完全に暗号化して書き込む」機能を持っているものが多い。ここで使われている暗号は強固なもので、機器へのログインパスワードや「暗号化キー」がないと、現実的には中身を見ることができない。機器を利用する人はあまり意識する必要がないが、パスワードを知らなかったり、顔認証・指紋認証などをパスできなかったりする場合では、データへのアクセスができない。再利用するには「再初期化」するしかなく、再初期化された後にも、一度暗号化されているので、データを取り出すのが難しい。ストレージ全体の暗号化をしておき、さらに処分時に初期化をすれば、データを取り出される可能性が劇的に小さくなる。個人レベルなら、これでほぼ安心といえる。

 実は、iPhoneは自動で暗号化されているし、アンドロイドも、日本で流通する比較的性能の高い機種の場合、ほとんどが標準で暗号化を採用している。そのため、フォーマット後のデータ取り出しは難しい場合が多い。

 ただ、すべての機器が出荷時から暗号化を利用しているわけではない。特にパソコンの場合、設定時に「暗号化する」ことを選ぶ必要があるし、すべてのパソコンで暗号化が最初からオンになっているわけではない。こうした設定を確認したことがない人がほとんどのはずで、特に家庭向けでは、オフで使われている例も多いのではないか。

 トラブル時にファイルの取り出しが難しくなることから、「暗号化はすべきではない」と指南する人もいるようだが、セキュリティーを考えると、いまは「オン」にしておくべきだろう。ただ、その設定がわかりづらく、不安感を覚える人もいるかもしれない。暗号化をしていても、手間を省くために「自動ログイン」などを使っていては意味がないし、どちらにしろ、手放す時には「初期化」すべきであることに変わりはない。

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