「はや2NOW」サイトから
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豪州上空に向けてカプセルを放出するはやぶさ2のイメージ。まだ豪州政府との交渉もあり、帰還日は来年11~12月としか言えないという(写真:JAXA提供)
豪州上空に向けてカプセルを放出するはやぶさ2のイメージ。まだ豪州政府との交渉もあり、帰還日は来年11~12月としか言えないという(写真:JAXA提供)

 小惑星リュウグウの探査を終え、地球への帰還飛行に入った「はやぶさ2」。初代は苦難続きだった復路を無事乗り切れるか。実は誰もがPCやスマホで見守れる。AERA 2019年12月2日号の記事で掲載された記事を紹介する。

【写真】豪州上空に向けてカプセルを放出するはやぶさ2のイメージ

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 リュウグウでの探査を計画通りに完遂し、その技術力を世界に見せつけたはやぶさ2。全て順調だからこそ、なおさら関心をかき立てているのが、地球帰還までの最終プロセスだ。

 初代はやぶさは、推進力を担う4基のイオンエンジン全てが故障し、一時は地球到達が絶望視された。イオンエンジン内で部分的に機能していた箇所をつなぎ合わせて1基分にするという一か八かの超裏技で、なんとかエンジンを作動させて復活を果たしたという苦難の過去がある。悲劇ぎりぎりのところで生還したからこそ、奇跡の物語として複数の映画がつくられるほど盛り上がったが、悲劇も奇跡も2度目はいらない。

 そこで重要となるのは、改良を重ねた今回のイオンエンジン。開発担当者の細田聡史氏は、リュウグウ出発に際して、「再びイオンエンジンの出番が迫っている。襷をしっかり握って、アンカーまで繋ぎたい」とのコメントを出した。

 JAXAがリュウグウ出発を発表した11月12日の記者会見で、プロジェクトマネジャーの津田雄一准教授は、復路での最大の注意点を聞かれ、イオンエンジンと、地球に届けるカプセルのピンポイント着陸の2点を挙げた。

「イオンエンジンの巡航は適切なタイミングで適切な方向に(姿勢制御のための)スラスタ噴射をしないといけない。これをきちんとやっていくのが第一だ。さらに地球のある一点を狙ってカプセルを着陸させるためには、精密な軌道制御が必要で、やり直しのきかない運用になる。全ては最後の着陸のところに集約される。最後に近づけば近づくほど厳しさは増す」

 打ち上げ直後からトラブル続きで最後は満身創痍となった初代と異なり、はやぶさ2は今のところ重大な問題とは無縁だ。ただ、絶対はない。現在は、リュウグウ探査中の約1年半にわたり動かしていなかったイオンエンジンを約2週間の試運転で慎重に確認している最中だ。そのため、約8億キロの帰還飛行を本格化するのは12月3日以降になるという。

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