最後は地球をかすめるように飛行しながらカプセルを地上に向けて放出した後、再び宇宙空間へ戻り、今後の新たなミッションに備える。新たな探査目標は今後の検討課題だという。初代は地球の引力に抵抗する力が残っておらず大気圏に吸い込まれて焼き尽きた。はやぶさ2が無事に地球の引力から脱出して、元気な姿を維持することができるのかも注目される。

 はやぶさ2に関する情報は、JAXAがホームページなどを使って積極的に公開してきた。

 リュウグウの画像や記者会見のライブ映像、発表文書にとどまらず、ウェブ上で一般の人たちからの疑問に答える催しをやるなど、情報量がすごい。小惑星探査に詳しくない人にも興味を抱いてもらえるような工夫が随所に目立つ。

 特に優れものなのが、はやぶさ2と地上局との通信で使われる電波データをリアルタイムで公開している「はや2NOW」だ。探査機の地球までの位置や現在の「健康状態」などがひと目でわかる。イオンエンジンの状態は分からないが、なにか異常が起きれば、それを想像できるだけの豊富なデータがそろっている。今後1年をかけてクライマックスを迎えるはやぶさ2の現況を、誰もが常にパソコンやスマホで追い続けることができる夢のあるサイトだ。

「文句なしの成果を得られた」(津田准教授)として、予定よりも早く、余裕をもって帰還へとかじを切ったはやぶさ2。しかし、ドラマはたびたび最後に起こる。「まさか」は、常につきものだ。

 世界陸上と五輪で通算19個の金メダルを獲得した世界最速のスプリンター、ジャマイカのウサイン・ボルトは17年の最後の世界陸上でのリレー競技でまさかの転倒をし、そのまま引退となった。野球の国際大会「プレミア12」第1回大会(15年)では、それまで無敗だった侍ジャパンが準決勝の韓国戦で、勝利を目前とした9回に大逆転されてまさかの敗北。日本は今年、第2回大会の決勝で韓国を破り優勝し、4年越しの雪辱を果たしたばかりだ。

 さて、はやぶさ2は「まさか」を引き寄せずに有終の美を飾れるだろうか。初代はやぶさに起きた悪夢が記憶に新しいハラハラドキドキの地球への帰路だからこそ、JAXAが公開する情報をフル活用してリアルタイムで応援していきたい。(朝日新聞GLOBE編集部・山本大輔)

AERA 2019年12月2日号より抜粋