
ヤフーとLINEが統合発表で打ち出した「世界の第三極になる」という志。だが、GAFAの背中は遠い。むしろ透けるのは、国内の守備固めの側面だ。AERA 2019年12月2日号では、統合の本質に迫る。
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「世界の第三極になることで一致している」
「ヤフー」を展開するZホールディングス(ZHD)の川邊健太郎社長は18日、LINEとの経営統合の会見で、こう強調した。だが、その「志」とは裏腹に、米西海岸の取材でみえるグーグル、アマゾン、フェイスブック(FB)、アップルのGAFAの背中はあまりに遠い。
メッセージアプリで、LINEのライバルであるFB。「メッセンジャー」「インスタグラム」「ワッツアップ」のメッセージアプリに、FBを加えたグループ全体で、世界の月間利用者数は28億人に上る。
これに対し、ヤフーの月間利用者数は約6700万人で、ZHDのアプリ全体では1.4億人。LINEの利用者は国内で約8200万人で、国外には1.04億人。ZHDとLINEを単純合算しても、FBの規模は1ケタ違う大きさだ。
ZHDとLINEを合わせると約3兆円だが、FBは約61兆円に上り、20倍だ。アップルは127兆円、グーグルの親会社アルファベットは97兆円、アマゾンは94兆円と先を行く。
規模の差は研究開発投資力に直結する。ZHDとLINEは、合計の年間投資額が約1千億円に上ると強調したが、米調査会社によると2018年のFBの年間投資額は約8500億円、アルファベットは1.7兆円。人工知能(AI)などへの研究開発投資がものをいうなかでは致命的ともいえる差だ。
むしろ、ZHDとLINEが試みようとしているのは、日本国内でヤフーとLINEが手を組み、GAFAのさらなる「侵略」を食い止めるための「守備固め」という色彩が強い。
18日の共同会見ではZHDの川邊氏とLINEの出澤剛社長の間に微妙なずれもあった。