「足並みがそろわなくなったときにはだれが決断を下すのか」と質問された出澤氏は「プロダクトに関する方向性は、プロダクト委員会で徹底議論し、それでも合意できなければ、LINEの慎(ジュンホ氏)が務めるCPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)が決定する」と言い、LINE側の影響力の大きさを示唆。これに対し、川邊氏は「CPOの制度は取締役会の下にガバナンスされる。最終的に決める場は取締役会だ」とヤフーの優位性を強調した。

 今回の経営統合で、LINEは存続会社となるZHDの下にぶらさがり、携帯会社ソフトバンクの連結対象となる。「対等」とはいえ、経営の主導権はソフトバンク側が握る形だが、LINE側の独立志向が強いことは会見でも見え隠れする。

 それでも両社が統合に合意したのは、それぞれの危機感が背景だろう。

 台湾やタイなどアジアでも浸透し、GAFAとの競争を肌で感じているLINEには、「(GAFAに)データ、人材、お金が集中」(出澤氏)し、挽回不可能になる恐怖感があった。ソフトバンクグループが有する、多大な資金力と世界のAI企業とのつながりで、反転攻勢をかける狙いがありそうだ。

 一方、パソコンからのアクセスで発展してきたヤフーは30代や40代の利用者が多い。スマホの利用が主流になったいま、10代や20代など若者に強いLINEの攻勢に苦しんでいる面があった。グループ会社に取り込み、LINEの成長を取り込む思惑がありそうだ。

 AI時代に巨額投資をできる資金力を求めたLINE側と、スマホアプリの雄をかねてから自社グループに取り込みたかったヤフー・ソフトバンク側の狙いが一致したのが今回の本質だろう。まずは国内で守備を固めたうえで、遠いGAFAの背中を追い始める、というのが今回の動きの実態のようにみえる。(朝日新聞サンフランシスコ支局長・尾形聡彦)

AERA 2019年12月2日号