稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
記事を読むのも面白いけど、やっぱり見てないということは決定的。テレビとスポーツの深い関係を思う(写真:本人提供)
記事を読むのも面白いけど、やっぱり見てないということは決定的。テレビとスポーツの深い関係を思う(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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*  *  *

 みなさまラグビーW杯は十分に楽しまれたでしょうか。なんだか世間は大変なことになっていたようで、銭湯仲間のおばあさまがたも、湯船の中で「もうはまっちゃって!」「ルールはちっともわかんないんだけど、でも面白いのよねー」などとキャイキャイしておられました。
 
う、うらやましい……。

 いやね、私、結構ラグビー好きなんですよ。国立競技場に見に行ったこともある(まあルールはよくわかってはおらんのだが)。だがしかし、このたびの歴史的な盛り上がりにはほとんど参加できずに全ては終わったのであった。

 理由はただ一つで、それはテレビがないから! 以前も書いたが、テレビなくしてスポーツに興味を持つのは非常に難しい。ラジオでは何が起きているんだかさっぱりわからん。このような時だけは「ちぇっ」と思うのである。

 でもね、一回だけ見たのよ。ライブ映像。銭湯で風呂から上がって帰ろうとしたところで、ロビーのテレビで南ア戦を中継中。このとき私は初めて「動く日本代表」を目にしたのであった。妙な感想で申し訳ないが、半数近くが海外出身選手ということは知っていたけれど、どの人が海外出身なんだかさっぱり見分けがつかなかった。まさしくワン・チームである。そうかこれからは国の時代じゃなくて、チームの時代なんじゃないかしら? そう思ったらちょっとワクワクした。

 それはさておき、ロビーには若い男性客もいて、2人並んで「ルール難しいっすね」と言いながら仲良く観戦。すると銭湯のおかみさんが「本当はビールがいいんでしょうけど」と言いながらアメを1個ずつくれた。

 で、この時ひらめいたのである。そうだよ見たい試合があったらこうして外で見たらいいじゃないの。銭湯でも、商店街のスポーツバーでもいい。そうだよ家で一人で見るよりみんなで見た方が楽しいに決まってる。なんだどうしてもっと早く気づかなかったんだろう。かくして、ひとり街頭テレビの時代に遡ろうとしている私である。

AERA 2019年11月18日号

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稲垣えみ子

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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