系外惑星発見の報告は1995年、二人の連名論文によってなされた。その後、この発見の重要性が認識されるにつれ、マイヨールの名声は高まっていったが、彼は決して業績を独り占めにせず、いつも大学院生だったケローの貢献を公言していたのではないだろうか。それが二人の共同受賞に帰結したのだと思う。

 さて、系外惑星の発見とは、我々の住むこの太陽系以外の恒星系に地球と同じような惑星が存在していることを実証したということ。恒星は自ら光っているから観測しやすいが、その周りを回る惑星は暗すぎて見えない。彼らは、その存在を観測する手法を編み出した(惑星が回転することによる恒星の揺れを検出した)。

 これはそのまま、地球外生命体の存在、という夢につながる。

 宇宙には高度な文明を発達させた「宇宙人」が存在しているかもしれない、というのは、科学者の見果てぬ問いであり、またSF小説の格好のテーマでもあった。なぜ彼らは地球にやってこないのか? すでに来ているのだが存在を隠しているのだ、ピラミッドやナスカの地上絵は宇宙人の痕跡では? いや、彼らは静かに地球人の進化を見守っているのだ、などなど空想は限りない。超越的な宇宙人の存在というのは、一神教の思想とも関連しているように思えるのだが、そもそも、仮に地球と同じような環境が存在しているからといって、そこに生命が誕生するかどうかはまた別の問題である。それを次回、検討してみよう。(文/福岡伸一)

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福岡伸一

福岡伸一

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。

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