「ボロボロ、真っ赤っかの大赤字」と2019年9月期中間決算を発表したソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。投資の失敗が原因だが、積極的な投資を続けるという/11月6日、東京都内 (c)朝日新聞社
「ボロボロ、真っ赤っかの大赤字」と2019年9月期中間決算を発表したソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。投資の失敗が原因だが、積極的な投資を続けるという/11月6日、東京都内 (c)朝日新聞社

 ソフトバンクグループが巨額の赤字に転落した。原因は投資先企業の不振だ。自身の目利きで投資して収益を急拡大してきた孫氏を、さらなる落とし穴が待つ。AERA 2019年11月18日号に掲載された記事を紹介する。

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 ソフトバンクグループ(SBG)の2019年9月期中間決算で、7~9月の営業損益が7043億円の赤字に陥った。携帯電話やインターネットの通信事業が原因ではない。現在のSBGは、世界中の有望な企業に資金を投じる投資会社。ファンド事業で投資した米国のシェアオフィス運営企業やライドシェア企業の価値が下がったことで9702億円もの損失を出した。

「90社で1兆2千億円の成果を上げた」

 6日の決算会見で孫正義会長兼社長は、傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」による投資の成果をこう強調した。しかし、シェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーへの投資の失敗はあまりにも大きかった。孫氏がウィーカンパニーの創業者にほれ込み、103億ドル(1兆1130億円)もの多額の資金をつぎ込んだが、創業者がガバナンス問題で糾弾されて取締役からも退任。企業価値は急降下し、孫氏は「投資の失敗」と認めざるを得なかった。

 SVFの投資先は孫氏の「目利き」によって決まる。大半がユニコーンと呼ばれる企業価値10億ドル以上の未上場企業で、規模は大きくても事業内容や業績が安定しないことが多く、企業価値の変動が激しい。

 元々、SVFが投資先を拡大するにつれ、「有望な投資先はどんどん乏しくなっている」との見方はあった。それでも神通力があるかのように「当たり」を引き続けてきた孫氏が、ついに「外れくじ」を手にした影響は大きい。これまで、SVFの投資先企業には「あの孫氏が投資するのだから」と企業価値が上乗せされていた側面もあったが、今回の投資失敗で、ほかの企業の価値も連鎖的に下がってしまったのだ。

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