初めての「ハシモトコール」に「力になりました」と笑顔を見せる橋本勝也。「自分の武器はスピード。磨きをかけて、笑顔を届けられるプレーヤーになりたい」(撮影/写真部・加藤夏子)
初めての「ハシモトコール」に「力になりました」と笑顔を見せる橋本勝也。「自分の武器はスピード。磨きをかけて、笑顔を届けられるプレーヤーになりたい」(撮影/写真部・加藤夏子)

 ラグビーW杯で日本代表が決勝トーナメント進出を決めた3日後、「もう一つのラグビーW杯」が都内で開幕した。激しいぶつかり合いとスピーディーかつ緻密なプレーに、会場には歓声が響き渡った。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。

【選手の理想かなえる「整備の神様」】

*  *  *

 キャプテンの池透暢(ゆきのぶ=39)が絶妙なロングパスを出すと、エースの池崎大輔(41)がボールをキャッチ、トライラインを一気に駆け抜けた。

「トライ、No.7、池崎」

「ダイスケー!」

 トライが決まった瞬間、会場DJがコールをし、客席が応え、掛け合いが起きた。

「選手がトライを決めたら、一緒に名前をコールしよう」

 試合中にDJケチャップさん(44)が、観戦に来ていた小、中、高校生たちに声をかけたからだ。最初はなかなか乗れなかった子どもたちも、選手たちの熱いプレーを見ているうちに歓声に力がこもってきた。近くの席にいた小学生の男の子は試合終盤、興奮した様子で「おれ、絶対、池崎大輔ファンクラブに入る!」と話していたほどだ。

 日本代表の快進撃でラグビーW杯が盛り上がる中、もう一つのラグビーW杯「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」が10月16日から20日まで東京体育館で開催された。

 参加国は世界ランキング上位8チームであるオーストラリア、日本、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ニュージーランド、ブラジル。日本は現在世界ランク2位であり、前回のリオパラリンピックでは銅メダル、昨年の世界選手権は初優勝、今年9月のアジア・オセアニア選手権では準優勝している。来年の東京パラリンピックではもちろん、金メダルを目指す。ケビン・オアー監督(51)は大会前のインタビューで、「この大会は、今の日本チームの実力を知り、若手を試す絶好の機会」と語っていた。

 車いすラグビーは、四肢に障害のある選手が4対4で戦う。ラグビー、バスケット、バレー、アイスホッケーなどの要素が組み合わされており、選手は障害の程度でもっとも重い0.5点から3.5点まで、0.5点刻みに7段階でクラス分けされる。コート上の4人の持ち点合計が8点以下でなければならない。3.0以上の選手をハイポインター、1.5以下の選手をローポインターと呼ぶ。

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