しかし、徴用工訴訟問題、日本による韓国向け輸出規制強化措置、韓国による日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)破棄という三つの懸案を解決する具体的な打開策は見つかっていない。24日の会談は、こうした厳しい現状を改めて確認する場になったようだ。

 韓国政府関係者は「李洛淵首相の訪日前まで、水面下で調整を続けたが、妥協点が見つからなかった」と語った。近づく総選挙を意識してか、日本側に譲歩の気配はない。

 当面の懸案は、11月23日(午前0時)に失効するGSOMIAの延長だが、韓国は「日本の輸出規制で信頼関係が破壊された」として破棄を決めた経緯がある。日本が輸出規制を撤回しないまま、GSOMIA延長に応じれば、文政権の政治責任問題に発展する恐れがある。徴用工問題も含め、具体的な妥協案はまだ見つかっていない。

 11月は、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議やアジア太平洋経済協力会議(APEC)など、安倍首相と文大統領も出席する国際会議があるが、いずれも滞在時間が短く、調整は簡単ではない。

 日韓両政府は12月下旬、中国で開かれる日中韓首脳会議の際に日韓首脳会談が開かれる可能性が最も高いと判断し、それまでに何とか妥協案を探りたい考えという。

 現時点では、GSOMIA破棄の流れは依然変わっていない。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

AERA 2019年11月4日号