韓国の李洛淵首相(左)との会談冒頭、握手を交わす安倍晋三首相。李首相は元大手紙記者で東京駐在経験もあり、知日派として知られる/10月24日、首相官邸で (c)朝日新聞社
韓国の李洛淵首相(左)との会談冒頭、握手を交わす安倍晋三首相。李首相は元大手紙記者で東京駐在経験もあり、知日派として知られる/10月24日、首相官邸で (c)朝日新聞社
日韓関係で注目される日程(AERA 2019年11月4日号より)
日韓関係で注目される日程(AERA 2019年11月4日号より)

「即位の礼」を機に実現した日韓首相会談。関係改善のきっかけになるかと期待されたが、懸案を解決する打開策は見つからないままだ。 AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。

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 10月24日午前、安倍晋三首相は首相官邸で、天皇即位礼のため来日した韓国の李洛淵(イナギョン)首相と会談した。会談時間は21分。韓国政府は会談後、文在寅(ムンジェイン)大統領が安倍氏にあてた親書で「日本は北東アジアの平和のための重要なパートナー」「韓日両国の懸案を早期に解決するよう努力しよう」と訴えたと明らかにした。安倍氏は親書に感謝する考えを示したが、韓国メディアを中心に期待された「11月の日韓首脳会談開催で合意」という発表はなかった。

 この結果を、どう見たら良いのだろうか。

 複数の日韓関係筋は「韓国政府が、日韓関係の改善に積極的になったのは事実」と語る。でも、事前の外交接触で、韓国は従来の政策を変更する考えを示さなかった。日本政府関係者の一人は「事前の調整もなく、首脳会談の約束はできない」と話す。頭で関係改善を望んでいても、体がついていかないという状態といったところだろうか。

 韓国の政界関係筋によれば、文在寅大統領の政権運営に明らかな変化が出始めたという。契機は10月3日、ソウル中心部で40万人以上が参加したとされる「反文在寅集会」だった。文氏は7日、大統領府の幹部会議で「国民の多様な声を厳粛な気持ちで聞いた」と発言。14日、文氏の側近、曹国(チョグク)法相が辞任した。

 曹氏はこれまで自身のフェイスブックに日本企業に韓国人元徴用工らへの賠償を命じた大法院(最高裁)判決について、「否定や非難、歪曲する人は親日派(売国奴の意味)と呼ぶべきだ」と投稿。自身の政治姿勢を、過去の抗日独立運動などに重ね合わせた。

 曹氏の動きは、「抗日・反日運動を、自身の疑惑隠しに利用した」との疑惑を招き、政権内で、日韓関係の改善を望む声が相対的に大きくなっている。韓国内でも、日韓の険悪な状態が、経済や安全保障に悪影響を及ぼすことへの危機感が増大。李首相の訪日を契機とした劇的な局面転換を期待する韓国メディアの報道につながったという。

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