鶴瓶:「ディア・ドクター」の時も主演という意識はあまりなかったんです。役がどうというより、今回も映画「閉鎖病棟」の潤滑油になれたらな、と。平山組全体の雰囲気を引っ張っていけたらと思って病院の売店の人たちと仲良なったりもしました。

綾野:僕はロケ中は小諸高原病院で一番重度と言われている病棟に毎日行って、子どもたちと交流を深めました。

鶴瓶:むちゃ仲良なったね。ほんまの病院でやっていたから、どうしても重なってしまう。でもそうならないようにしました。

 脇を固めるキャスト陣も、医師の高橋和也、看護師長の小林聡美、入院患者を演じる木野花、渋川清彦など芸達者ぞろいだ。個性的な俳優たちのアンサンブルで、画面には緊張感と調和が独特の空気感を生み出している。

鶴瓶:完成した映画を観て、みんなすごいなと。芝居を見ていて、客観的にいい映画だな、優しい映画やなと思いましたね。車いすでのアクションシーンでは、相手役の渋川さんがうまいこと動いてくれました。

綾野:症状が出たりするところでは、監督に「映画にスイッチを入れてほしい」と言われたので、「思いきりやります」と言って、チュウさんが持っているものやこれまで感じたことをそのまま放出しました。

鶴瓶:ほぼすべてワンテイクやったね。

綾野:監督に初めて会った時、「僕の現場ではアドリブは困る。テストでやったことを本番でもやってもらわないとスタッフも困るから」と言われたんですよ。その時に監督が何かに恐怖している感じを僕は感じて。監督は長い時間この作品と向き合ってきて、いざ撮るとなったときの恐怖心や孤独をとても感じて、そこが信頼できました。でも実際撮影が始まると、「じゃあ回すよ」って。あ、テストやらないんだと思って(笑)。現場で起こったことを撮っていく、僕たちのドキュメントを撮っていくという感じでした。

小松:最初は監督が思っている由紀と私が思っている由紀にずれがあるなと感じていたのですが、日々現場に臨むうちに徐々に同じになっていきました。でもそれを裏切りたい気持ちもあって。自分が思い描く由紀を表現したいと、日々葛藤していました。大声で叫ぶシーンがあるんですが、そのシーンは考えずに自然とすべてが出たという感じでした。それまで言葉にしていなかった部分や秘めている部分を出し、子どものように泣いていいんだなと思いました。

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