●まずは脱ぐことからスタート

 では具体的に、どのようにステップアップすればいいかをお話します。

 まず簡単なのが「脱ぐ」です。その中でも「靴下を脱ぐ」ことからスタートしてみましょう。これは1歳ごろの赤ちゃんからチャレンジできます。

(1) お母さんが、かかとが出るまで脱がします
(2) 赤ちゃんの手を持ち、一緒に靴下の先を持ち引っ張ります
(3) 脱げたら「スポーンと脱げたね」と脱げた喜びを共感します。

 これを何度も繰り返しているうちに、自分で脱ぐことができるようになってきます。自分で脱げた「どや顔」はとっても可愛いですよ。最近は、自分で脱ぎやすくするために、足首辺りを赤ちゃんがつまめるよう工夫した靴下も販売されています。この靴下だと、かかとから脱ぐことができます。

 靴下が脱げるようになったら、次はズボン。まずはかかとまでずらしたズボンを脱ぐことからスタート。一人で立てるようになったら腰からズボンを下ろすのもチャレンジです。上着は、腕を脱いで頭だけ脱ぐことからスタートです。上着は上への力が必要でなかなか難しいので、緩めの服だと比較的脱ぎやすいです。では、ここで靴下を脱ぐ・履く練習にもなる遊びを紹介します。

・シュシュでサンバ
 髪の毛をくくるシュシュを用意します。数があった方が楽しいです。まずは赤ちゃんの手足に、シュシュをはめ、シュシュを取ることからスタート。時期を見て徐々に自分でシュシュをはめることができるようになってきます。シュシュを両脚、両腕にはめるとまるで男性サンバダンサーの衣装みたい!マラカスや鈴など持って赤ちゃんと一緒に踊ってみても楽しいですよ。

●「待って」さりげないサポートが親の役割

 なかなか脱げない、着られない。そんな子どもの姿を見ていると思わず手が出て手伝ってしまいがち。何か用事がある場合はなおさらです。でも、今「自分でする」と決めている子どもに手を差し伸べると「自分でするって言ってるじゃない!」と言わんばかりに怒り出し、大泣きして手が付けられなくなる……なんてこともあります。ですので、基本的に親は「待つ」ことが大切。そして、さりげないサポートをするのです。

 例えば、ズボンを履くときによくあるのが、最後のおしりへの引き上げがうまくいかないこと。そんな時は、さりげなく子どものズボンのおしり側をもって、子どもがズボンを上げるタイミングに合わせてサッと上げるのです。上着からなかなか頭が出てこないときは、子どもが引っ張るタイミングに合わせてさりげなく引っ張る。この「さりげないサポート」をすることで、子どもの「自分でできた!」を応援します。子どもが着替えのコツをつかんで来たら、「さりげないサポート」は徐々に減っていくでしょう。

 私の娘は、4つ上の兄を尊敬し、ずっとついて回っていたため、1歳前から着替えに関心があり、どんどん服を脱ぎ、おむつまで脱いで、気づけば、すっぽんぽんになってハイハイしている、なんて日々が続きました。服を着せようとすると、のけぞって嫌がり、着せてもすぐ脱ぎます。「おしっこを漏らさないでよ!!」とヒヤヒヤものでしたが、夏だったこともあり、本人が飽きるまで付きあいました。まだ一人で立てもしないのに、どうやって彼女が服を脱いでいたのか?今でも不思議ですが、改めて思うのは、彼女は服を脱ぐことが楽しくて心地良かったのだろうと。やっぱり衣服の着脱は、子どもにとって遊びのひとつ。はじめはとても時間がかかりますが、子どもが満足するまで付き合うと、どんどん上達して結果的に自分でしてくれるようになるのでラクになります。今はできなくても、いずれできるようになりますので、焦らず、できたらできた気持ちに共感する、できないときはさりげなくサポートする、を繰り返して進めていきましょう。(文/中田馨)

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中田馨

中田馨

なかた・かおり/1978年生まれ。兵庫県の認可保育園、中田家庭保育所施設長。一般社団法人離乳食インストラクター協会代表理事。保育士目線の離乳食講座受講生は4年で2000人。自身も中3男子、小5女子の子育て中。

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