立命館大学/西川幸穂常務理事(総務担当)。広報課、人事部等を経て現職。「教職協働は教員の業務軽減だけでなく新たな大学像を作る基礎になります」(撮影/写真部・小山幸佑)
立命館大学/西川幸穂常務理事(総務担当)。広報課、人事部等を経て現職。「教職協働は教員の業務軽減だけでなく新たな大学像を作る基礎になります」(撮影/写真部・小山幸佑)
職員が充実している大学は科研費を集めやすい(AERA 2019年10月21日号より)
職員が充実している大学は科研費を集めやすい(AERA 2019年10月21日号より)
職員が充実している大学は資産運用力が高い(AERA 2019年10月21日号より)
職員が充実している大学は資産運用力が高い(AERA 2019年10月21日号より)

 グローバル化や運用強化、若者の減少など様々な課題に直面する大学。鍵を握るのが、複雑な実務をバリバリとこなす職員の力だ。 AERA 2019年10月21日号に掲載された記事を紹介する。

【図】職員が充実していて科研費を集めやすい大学は?

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 大学の競争力や成長性、教育の質を左右する経営力。その源泉となるのが、教授ら教員とともに大学を支える職員の力だ。1300人ほどの大学職員で組織される大学行政管理学会の金田淳一会長(法政大学)はこう語る。

「広範化、専門化した大学運営を職員の存在抜きに教員だけで行うことは不可能です。運営のみならず経営についても職員がトップマネジメントを支え、多くの教員に対し教育・研究に専念できる環境をつくる。そうすることで教育・研究の質を一層向上させていくのが、今後の大学の目指すべき方向です」

 職員数が充実している大学ほど科研費採択や資産運用が好調であることが読み取れる。

 大手私大では先駆的に職員出身の理事長が輩出した立命館大学。西川幸穂(ゆきお)常務理事(58、総務担当)も、職員はIR(大学の活動に関する情報収集や調査分析)やURA(研究推進支援を担う専門人材)といった専門性を持ち、教員が活躍しやすい環境を作るべきだと言う。

「意思決定のスピード感が大事で、そのためには現場での判断力を高める必要がある。職員の仕事を高度化して意思決定を速やかにしていくのが重要です」

 純利益で1位、収益性や成長性で2位となった東洋大学の強さの源泉も、意思決定のスピード感にあるようだ。

 他大に先駆けてキャンパスの都心回帰を進めた東洋。大都市への工場や大学の新増設を規制した工場等制限法が2002年に廃止されたが、この廃止に東洋の理事も動いていたという。それもあり、05年、いち早く1、2年次の教育を埼玉県の朝霞キャンパスから白山キャンパス(東京都文京区)に変更。17年には、赤羽台キャンパス(同北区)を開設するが、これも東京23区内の大学定員増を抑制する地方大学振興法の成立(18年5月)にギリギリ間に合った。

 キャンパスが都心回帰すると人気が上がるのが一つのセオリー。09年に板倉キャンパス(群馬県板倉町)の国際地域学部を白山第2キャンパスに移転させた際は、志願者数は約4倍になったという。笠原喜明理事・事務局長は言う。

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