“秘密の友人”を演じるシム・ウンギョンとの生き生きと弾けた掛け合いも魅力だ。

「共演は本当に楽しかったです。ウンギョンちゃんはのびやかで目が離せなくて、魅力的。二人でのシーンはアドリブも多かったんです」

 デビュー16年。いまも演技には常に迷い、悩むという。

「撮影中も目指すものにたどり着くまで悩むのですが、それよりオフの時間のほうが苦しいかもしれません。悩んでも出口が見えないというか」

 25歳のとき、立ち止まってしまったこともあった。

「すべてに自信がなくなって、どん底まで落ち込んだんです。『ほかの道があるのでは?』とも思ったけれど、結局、ほかにやりたいこともやれることも見つからなかった。それならばこの仕事を突き詰めよう、と思い直しました」

 物づくりが好きだが、一人では何もできないのだと笑う。

「私は自分一人でゼロから何かを生み出すことができないんです。でも映画は一人で作るものじゃない。だからこそやっていけるのかなと思います」

◎「ブルーアワーにぶっ飛ばす」
1982年生まれ、CMディレクターとして活躍する箱田優子の映画監督デビュー作。10月11日から全国公開

■もう1本おすすめDVD 「箱入り息子の恋 ファーストラブ・エディション」

 ミュージシャンの星野源の初主演映画「箱入り息子の恋」(2013年)で夏帆は主人公が想いを寄せる女性を演じている。

 天雫健太郎(星野源)は市役所に勤務する35歳。マジメだが内気な性格で、趣味はゲーム。実家暮らしで、女性と付き合った経験もない。

 そんな息子の将来を案じる父(平泉成)と母(森山良子)は息子に代わって代理見合いに参加する。そこで出会ったのはやはり娘・奈穂子(夏帆)の代理で出席していた今井家の父(大杉?)と母(黒木瞳)。両家は本人を交えて見合いの席を設ける。が、当日今井家から「娘は目が見えない」と打ち明けられ、天雫家は動揺を隠せない。しかし当の健太郎は気にせず奈穂子も健太郎に惹かれていくのだが──?

 草?剛主演「台風家族」の市井昌秀監督の長編デビュー作。お見合いの席で娘の障がいが初めて明かされるなど、微妙な「あり得ない!?」を織り込みつつ、根っこには普遍の「家族あるある」がある。

 夏帆は可憐で清楚ながら、芯の強さも醸し出す奈穂子役を好演。35歳童貞男に惚れられるヒロインとして、実に説得力があり、それが映画の魅力を増している。

◎「箱入り息子の恋 ファーストラブ・エディション」
発売・販売元:ポニーキャニオン
価格4700円+税/DVD発売中

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2019年10月21日号